私を国立に連れてって

STAGE3



 トレーニング?の一貫として高崎に命じられ、宏樹はスタッドを仕入れるためスポーツ店に向かっていた。しかし、宏樹は通常練習がしたかった。当たり前と言えば当たり前である。練習が嫌い、又はサボり癖があるなら別だが、宏樹はそういう性格ではない。練習熱心、友美に言わせてみれば練習バカなのだ。少し投げやり感が宏樹にはあった。


「ったく、うまいこと俺に買いに行かせやがって。」
「しょうがないじゃん、かってに高崎のを使った罰(ばつ)よ。」
「って何でお前がついてくるんだ?」
 実は友美もついて来ていた。
「お店の場所覚えるために決まってるじゃん♪」
 友美はノリノリである。
「をいをい、3年間マネージャーで何やってたんだよ?」
 宏樹は空かさず突っ込んだ。いや、突っ込まずにはいられなかった。
「・・・夢を追い続けてた、かな。」
「はぁ?」
 友美の意外な発言に宏樹は少し驚いたが、”何だよそれ?”と言いたげな表情で返した。
「私ね、国立競技場でみんなががんばってる姿を応援するのが夢だった。それで、少しでも近づけるよう、マネージャーになった。でも2年間は本戦も進めず、夢は叶わないまま最後の年になった。」
「・・・友美・・・」
 少し内容の重い話になり、宏樹はさっきまでのひょうひょうとした態度から一変し、神妙な気持ちになった。
「最後の年になってやっと本戦まで1勝っていう所まで来た。本戦出場が決まっても国立で試合があるのは準決勝からだからまだまだ先だけど・・・・・一生に一度の夢、叶えたいよ・・・・・・」
 友美は今にも泣きそうな感じで語った。



 先にも述べたが、全国高校サッカー選手権大会への出場へのチャンスは高校在学中での3回。本戦へ進み、準決勝まで進まなければ国立競技場に入ることはできない、非常に狭き門なのである。そして現在3年生。ラストチャンス。友美の心はいろいろと思いが交錯していた。



「・・・どうりで県大会始まってから友美らしくなかったわけだ。他のみんなにも言われただろ?」
 友美にどう切り出せば良いか解らなかったが、友美の心境を探ってみた。宏樹もまた、友美の落ち込みようを心配していたのである。
「彩乃にも高崎にも言われたよ・・・・・」
 友美の言葉の後、宏樹は次ぎは何を言おうかと迷ったが、
「・・・・・夢、叶えてやるよ。」
「え?」
 宏樹の言葉に友美は少し驚いた。宏樹も国立の舞台へ行きたい、そう思っているからこその決意である。
「国立、連れ行ってやるって言ってるんだよ。」
 少し照れくさそうに宏樹は言った。
「ホント!?」
「・・・サッカーやってて国立目指してない奴なんていないって。」
「そう、だね。」
 宏樹の言ったことに友美は少しテンションが落ちた。考えてみれば、全員が国立を目指せば目指すほど、自分達が国立へ行ける確率は低くなる。ネガティブに考えてしまっていた。
「心配するなって。都本城高校サッカー部の3年生は俺とヤスだけ。俺たちだってこのラストチャンスに国立への切符掛けてるんだ。ちょっとは俺達のことを信頼しろよ、な?」
 宏樹の自信満々の顔に友美もどこかほっとした感じがした。そうだ、宏樹も、高崎も、チームのみんなも国立を目指してる。チームの思いは1つになっている。
「うん!♪」
 友美の返事は、いつもの友美らしくポジティブに満ち溢れていた。



 2人がそうこう話しながら歩いているうちに、スポーツショップに到着した。買うもの買って早く帰りたい宏樹の気持ちとは裏腹に友美のテンションは上がっていた。
「うわぁ〜、代表チームのユニフォームがいっぱいある〜!♪」
 今年はワールドカップの年。開催を前にスポーツショップでは出場国の代表ユニホームが先行発売されていた。その一角は 色鮮やかであり、スポーツショップと言うよりはアパレルショップだった。ユニフォームと言えど、女の子にも興味を引き付ける。ワールドカップ様々である。
「そりゃぁ、もう時期ワールドカップがあるからな。俺も日本代表でプレーして〜な〜」
「それは無理だね。」
 宏樹の言った事に”それは無理”と突っ込みを入れようとした友美だが、友美の前に言った人物がいた。
「あ、深谷!」
 それは北津高校の深谷潤という、外見は中学生のような美少年だった。そう、決勝戦で対戦する相手チームの司令塔である。
「久しぶりだね、海本。それに、マネージャーさん。」
 美少年が2人を見下したように挨拶をした。
「どうも・・・・・。」
 友美はぎこちない笑顔で返した。
「どうでもいいけど、こんな所でデートなんかしちゃってさ。」
 どうやら深谷という人物にはイチャイチャのデートに見えたらしい。しかもこの発言も嫌ったらしかった。
「デ、デート!?」
 予想もしない深谷の発言にかなり驚く友美。顔が真っ赤になりそうで、動作はアタフタしていた。一方、宏樹はというと冷静だった。
「デートなんかじゃねぇよ。お前ら北津高校との試合の前に用具そろえに来ただけだ。」
「ふ〜ん、もしかして僕らに勝つ気?2年前も去年も、全く歯がたたなかったことを覚えてないのかい?」
 宏樹達の都本城高校は2年前は準決勝、去年は決勝に当たっており、どちらとも敗戦していた。この2試合ともスコアは0−2、1−2であったが、北津高校が圧倒的にボールを支配する展開で、内容を見れば完敗に近かった。手も足も出なかったのである。
「過去は過去だ。今までの都本城高校と思ってたら大間違いだぜ?」
 宏樹は強気で、また自信満々で意味ありげに言った。これを聞いた深谷は
「ま、試合でのお楽しみにしといてやるよ。じゃ、せいぜい怪我しないようがんばりな。」
と、余裕で返してきた。その時、
「あんたこそ、なめてかかると痛い目にあうからね!」
 いきなり友美が声をあげた。さっきまでアタフタしていたのとは大違いであった。
「ご忠告どうも。じゃぁね。」
 深谷は友美の言葉を軽く流し、その場を去って行った。2人で深谷が見えなくなるのを眺めていたが、
「イタッ!」
 急に宏樹の右手が友美のおでこの方に伸びた。宏樹はいわゆる”デコピン”をしたのだった。
「な〜にむきになってんだよ。」
 友美のさっきの言葉を少しからかってみた。
「だって、あんなこと言われたら悔しいじゃない!」
 確かにあんな事を言われればだれでもムカツクだろう。友美の言っている事は間違っていない。
「ま、そういう所が友美らしいけどな。おっと、いけね、もうこんな時間だ。早く帰らないとヤスに怒られるぞ。」
 宏樹もわかっていた。友美の根は素直だということを。



 2人はふと気が付いた。学校を出て、スポーツショップまで来て、深谷とのやりとり。それなりの時間が過ぎていたという事を。時間を見てみると、もう部活の時間の半分が過ぎようとしていた。そして、主の用事である頼まれた買い物は2人ともすっかり忘れていたのだった。




あとがき

 ついに登場、深谷潤!って、皆さん知りませんよね(汗)STAGE3もなんとか完走致しました^^ぶっちゃけ宏樹と友美の”デート編”ですが、そんなにラブラブシーンはないですよ。だって一応スポーツ小説ですから!!残念!!(古っ)
 さて、深谷くん。本当に嫌みったらしい美少年!です。ラストでまた出てくるんですが、そこでもまた嫌みを。こういうキャラはやっぱりスポーツの中でも1人は必要です。良い意味でも悪い意味でも。実はこういうキャラをイメージしながら書くのは一番楽しかったりもしますんでね^^
 さて、次回STAGE4は部室編。こんだけ待たされた高崎はどうなっているか乞うご期待!!いや、普通に冷静ですけどね(爆)


展示:2008/7/23



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