私を国立に連れてって
STAGE2
| スポーツの秋も終わろうとしている晩秋。気温が徐々に落ちていく頃合に高校サッカー選手権の県予選は行われる。基本的には休日に日程が組まれているのだが、平日開催の時もあり、この時期は休む間もない忙しい時期なのである。そのせいもあってか、友美の頭の中は常に県予選の事でいっぱいだった。それに加え、先日の試合での海本の怪我・・・・・。 「それじゃぁ、教科書207ページを・・・・・佐藤さん、読んでください。・・・・・・・・佐藤さん?」 「友美、あたってるよ?」 「あ、ハイ!!」 先生にあてられた事もわからない程、友美にとっては授業どころではなかった。隣の席の親友である中払彩乃に声をかけられ、ようやくあてられた事に気づいた。 「佐藤さん?最近授業に対しての集中力が欠けてるみたいねぇ。」 「・・・すみません・・・」 別に先生の授業がきらいなわけではない。しかし、先生にはそう見えてるのかもしれない。あまりの授業態度に先生も注意せざるをえず、友美はただ誤るしかできなかった。 「友美?ホント最近変だよ。どうかしたの?」 親友の彩乃もここ数日の友美の異変に気づいていた。 「ううん・・・なんでもない。」 友美はこう答えるのが精一杯だった。これ以上、まわりに迷惑をかけないためにも・・・・・・・。 学校のチャイムが鳴る。それは6時間目の授業の終わりの鐘だった。数分後、友美はいつものように部室に向かって歩いていた。 「はぁ〜、私何考えてるんだろ?」 自分でも気がついていた。授業に集中しようとしても集中できない。やっぱり県予選の事がまず先に頭をよぎってしまう。そう考えながら歩いているうちに部室の前までたどり着いた。 「あれ?佐藤さん。」 友美が部室のドアを開けると、そこにはすでに高崎が来ていた。 「あ、高崎。どうかしたの?」 友美は高崎の投げ掛けに投げ掛けで答えた。問いかけを返された高崎はさすがキャプテン、冷静に友美の投げ掛けに返事した。 「いや、スパイクのひもが切れてたから交換しにきただけ。」 「やだ〜〜、縁起わる〜い♪」 友美のいつもの感じ。高崎はどことなくほっとした気持ちだった。 「・・・やっと佐藤さんらしい顔が見れた。」 「え?」 高崎の意外な言葉に友美は少し驚いた。 「最近、元気無かったみたいだったから。」 そう、高崎も気づいていた。ここのところの友美は元気が無い。サッカー部にとって友美はマネージャーとしての役目だけではなく、ムードメーカーの役割も担っていた。ムードメーカーが元気が無い状態では、試合での戦意喪失とまではいかないが少なからず影響が出てしまう。友美の役割は高崎が心配する程大きなものであった。 「ううん、そんな事無いよ。」 友美は何でもないかのように返した。 「ま、それならいいんだけど。」 高崎は引っ掛かるところがあったが何も言わなかった。本人がそう言うのなら、無理やり本音を言わせる必要はない。 その時、部室のドアが開いた。 「あ、宏樹。」 友美はどことなく少しトーンを下げた声を掛けた。宏樹を見て思い出すのはやはり準決勝の試合の怪我。別に意識しているわけではないが、自然とそうなってしまった。 「よぉ、友美、ヤス。こんな所で何してんだよ?」 宏樹は友美の心配をよそにいつもの調子である。宏樹らしいといえば宏樹らしい。 「ってか、お前は何しに来たんだ?」 「何しに?って、練習しに来たんだよ。」 高崎の問いに宏樹は「当たり前だろ」の感じで答えた。 「え!?もう大丈夫なの?」 宏樹の高崎への回答に友美は驚いた。 「ああ。こんな怪我たいしたことないって。」 友美は宏樹の怪我が大丈夫だとわかり少し安心した。この少しは今の友美にとっては相当なものである。しかし、まだ心配している事がまだかなり残されており、気は抜けていなかった。 「宏樹。」 「なんだよ?」 高崎は宏樹にまた問いかけた。 「練習、ほどほどにしとけよ。」 「ちょっと待った。なんでほどほどなんだよ?決勝戦まであと1週間切ってるんだぜ!それに決勝戦の相手知ってるだろ!」 高崎の言葉に宏樹は少し不満を表した。その時、友美が間に入った。 「・・・北津高校・・・なんだよね?2年連続して負けてる・・・」 北津高校。本大会の常連校であり、毎年県予選は決勝進出を決めている強豪校である。 「過去一度も勝ててない相手を前にしてのんびりしてられるかよ!」 宏樹は少し強気に出ていた。高校3年間で一度も勝てないのは屈辱と宏樹は思っていた。だから決勝戦に出て必ず勝ってやると、気持ちは燃えていた。 「まぁ待て、宏樹。まだ完治してないんだろ、脚?」 高崎は少し間を置くような感じで話題をそらした。それは脚の状態の事だった。 「そうなの?」 友美は心配そうに宏樹に聞いた。先ほどの少しの安心と再びの心配が天秤に掛けられている状態である。 「ん〜、80%ってところかな。」 「それって完治したって言わないよ。」 友美のテンションはまた低い状態に戻ってしまった。80%の状態ではキャプテン高崎が許可するわけがないと思っていたからだ。 「・・・ん〜、ま、80%くらい治ってたら大丈夫か。」 が、友美の心配空しく、あっさりと高崎の許可が出てしまった。でも、友美は再び少しの安心を手に入れた。 「よっしゃ!流石キャプテン!」 宏樹のモチベーションも上がった。しかし、高崎はすかさず言った。 「けど、誰も練習に出ていいとは言ってないぜ。まずは脚の体力回復して来い。」 「して来い、ってどこに行かせる気なんだ?」 「もう予備がないんだよな〜スタッド。誰かさんが先月の練習試合でとことん使ってくれたせいでな。」 スタッドとはスパイクの底についている鋲(びょう)、いわゆる大きなイボイボである。これがないとサッカーではブレーキの役割がないのと等しく、ドリブル時では急な切りかえしができない。スタッドには最初からスパイクに接着している固定式と磨り減ったり痛んだときに交換できる取替式とがあり、高崎が言っているのは取替式のスタッドの事である。 「しかたないだろ。あの時は雨降って来だして、取り替え式のスパイク使おうと想ったらスタッド外れてたんだよ〜(T−T)」 宏樹はしょうがないよ、と言わんばかりに答えた。 雨の時はとにかく滑りやすい。なので取替え式の方がグリップ力がある(固定式は合成樹脂が多いが、取替式は金属製が多い。すなわちグリップ力は取替式の方が高い)。取替式を使おうと宏樹がバッグから取り出すと、スタッドがなかったのであった。それに何故か外れやすかった。そうこう交換しているうちにスタッドの予備が無くなっていった、というのが詳細である。 「何でもかんでも私の仕事にさせるから罰(ばち)が当たったのよ!」 友美は偉そうに言った。マネージャーであるから、給水、備品用意、洗濯はもちろんだが、通常部員がするグラウンド整備を宏樹にやらされていた事もあり、友美にとってみれば「ざまあみろ」だった。 「そうだ、友美に買いに行かせればいいじゃねえか。こういう時こそマネージャーの仕事だろ。」 宏樹はまた友美に仕事を押し付けようとした。しかし、 「どこで売ってるの?」 が、友美はスパイクまでの知識は持っていなかった。たいていサッカー用品はスポーツ店で売っていると考えるが・・・・・。この辺が実は天然であった。 「どこって・・・お前本当にマネージャーか?」 宏樹が驚いて聞いた。当たり前である。 「そうだよ♪」 友美はすぐさま答えた。 「そうだよ♪って、をいをい・・・・・」 そして宏樹はますます友美の事が心配になったのである。 高崎は2人のやり取りを横入りする事なく聞き手になっていた。しかし、友美の姿を見て、本来の姿に戻ったと確信していた。 あとがき 後半グダグダ(爆)今回もなんとか書き終える事ができましたSTAGE2。落ち込んでいた友美もどうやら復活の兆しが!?ずっと暗いままのヒロインは嫌ですしね。それにしても、マネージャーやってて用品どこで売ってるか知らないなんてありえないと思うけど(汗) 展示:2008/6/21 |